ランチで立ち寄ったマックでのこと。
隣の席に、真新しいリクルートスーツに
身を包んだ男女が座って来た。
女の子は、「実は私もやったことある。
水下さいって!」と笑っている。
男のコのトレーをのぞきこんだら、
ハンバーガー二つに、水がおかれていた。
どうやら飲物代節約のために、
タダの水をもらったらしい。
 男のコは「おれ、スタバでもやるよ。
卒論もあるしと思ってバイト早く
やめすぎたよ」なんていいながら、
楽しそうに食事している。
 思えば、私の学生時代はバブルの真っ只中。
家庭教師でも時給3000円もらえたし、
テレビ局のバイトなんか一時間の生放送に
立ち会うだけで一万円もらえたから、
大学四年のときも私は、
おこずかいなしでも、
「水下さい」とは言わなくて済んだ。
おまけに、今と比べて、内定もはるかに
もらいやすかったに違いない。
知らないうちに、随分時代に甘やかされていた
ことに気付く。
それに比べて、隣で笑う若者のたくましいこと!

 そんなことをぼーっと考えながら、
店をでると、通りの向こうから、
二歳ぐらいのぼうやと、
お母さんが歩いて来た。
ぼうやは、左胸にブランドマークのついた、
シミ一つない白いシャツを着、
筋の通った半ズボンをはいて
紳士然として歩いている…。

だれもみんな豊かな生活を求めている。
ことさら我が子は、
不自由なく育てたいと親は願う。
しかし豊かな中で生きる力を育むのは、
なんとも難しいものだ。
なぜなら生きる力とは
「水をください」といえることなのだから。