昨日の物忘れは、まだよかったのかもしれない。
今日なんて、時がたつのも忘れてしまった。

夕方、息子が塾へ行ってしまうと、
珍しく娘が昼寝をしてくれた。
こんなことはめったいにない。
私は自由な時間を手にいれたのだ!
で、さっそく仕事を始めた。
例のデータベース作りである(2日前参照)。
元来、こういった作業が大好きなので
没頭していると、いつのまにか息子が帰宅。
昼寝から目覚めた娘と一緒に遊び始めた。
これも珍しい!
こんな珍事が連続して起こる幸運に感謝しながら
私は仕事をそのまま続行したのである。

そして、はたと気がついたのだ。
自分が、時がたつのを忘れていたことに。
時計の針はすでに午後7時30分を指している。
ま、まずい!
夕食も作っていなければ、お風呂も入れてない!
普段、子どもたちを8時30分には布団に入れ
9時には眠りにつかせるようにしている。
布団に入れるまで、あと1時間!

さすがに息子もあわててお風呂を洗ってお湯を注ぐ。
15分もするとお湯の準備ができたようなので
息子に娘をお風呂に入れてもらう。
その間に、夕食作り。
野菜を8種類、めった切りにして
冷凍しておいたいわしのつみれと一緒に
「つみれ汁」を作る。
これで「大地の会」の野菜を消費するという
ノルマも達成できるはずだ。
そして冷蔵庫の賞味期限が今日までの肉を選び
焼く。味付けは、もちろん塩・こしょう。
凝ってなんていられない。
これで一汁一菜のメニューがなんとか完成。

食卓に並べると息子がひとこと
「あ、またママ特製のまっずいスープだ」。
そりゃ、手っ取り早くノルマが達成できる
お鍋や、実だくさん汁、スープ等を
最近多用しているきらいはある。
でも、それもこれも母の愛。なんていうこと!
そもそもまずくないじゃない!
いろいろな野菜のだしが入って
おいしいはずよ!
私は、「つみれ汁」を一口含んでみた。
おいしーい!! 
講演で富山に行ったときに買ってきた
イカのおしょうゆの風味が、なんとも品よく
高級な味にしてくれている。
「おいしいよ! ね! ね?」
息子のコメントはなかった。
娘も、だまって「つみれ汁」をすすった。

食べ終わると息子が
「今度の週末は、ダダ(夫・スーパー編集長の愛称)
おいしいご飯、作ってくれるかなぁ」
あのね! ママもおいしいご飯作ってるのよ!
それにこのご飯だって、時間がない中
どんな思いで作ったか、
わかってるんでしょうね!
怒涛の口撃を見舞ってやろうと思ったら
スーパー編集長から電話が。
「今日の夕食はなに?」
「おいしいつみれ汁と、お肉」
「ふーん。おなかすいたから
ちょっと寄ってから帰るよ」
え? メニュー聞いといて、どういうこと?
もしやスーパー編集長もスープ恐怖症?

不愉快な夕食を終え、
いつもより30分遅れで9時に
子どもたちを布団に入れると、
スーパー編集長がご帰宅。
さっそく「つみれ汁、おいしいよ。食べる?」と
親切に提案するも、却下される。
代わりに「ラップ、なかったでしょ。
買い忘れてるんじゃない?」
といって、差出してくれた。
あ、忘れてた。
気を遣ってもらってるなあ。
そこで、はたと思い出した。
そういえば、今日介護のデータを調べていたら
痴呆症状チェックで
「最近、お料理の味がへんだといわれる」
というのがあったっけ。
ラップを見つめ、胸が熱くなった。
その時は…頼みます…、スーパー編集長…。