AKBより大事な消費税増税法案の行方。
でも残念なことに民主が割れるかどうかといった
「政局」を焦点に報道されてばかりです。
政治記者といわれる人たちには、
なぜかこれから政界がどう動くのか、
その予想を楽しむ傾向が強いような気がします。
うれしそうに予想を語る姿をTVでみるたびに、
「おいおい、競馬の予想屋かい!」とつっこみたくなります。
 
 でも、今の民主党の動きは、ものすごく重要な
ポイントを含んでいるのです。
なぜ、小沢派が消費税増税に反対なのか。
それを昨日の朝のTVで、ほんの一瞬、
福田衣里子議員が語っていました。
「野田首相は、命をかけて消費税を増税するといっていますが、
私たちは、命を懸けて社会保障を充実させたいんです」。

 実は、野田首相、一番妥協してはいけないところで、
妥協しているのです。消費税の増税は社会保障のため…というのが、
当初の民主党案でした。が、三党合意をまとめる中で、
消費税を「成長戦略」にも使えるようにしてしまったのです。
「成長戦略」が示すのは、法人税減税です。
 
ここのところ、ずっと不景気なような気がしていますが、
実は平成景気があり、一部の企業はちゃんともうかっていたのです。
が、それがちっとも従業員にまわってこない。
もはや企業は、家族として従業員を養う気などさらさらなく、
ただの使い捨てと考えていますから、儲かっても給料なんて上げない。
内部留保しているのです。

 だから「成長戦略」が一般の人たちの懐を潤すなんて言うのは幻想です。
そのために増税されたら、かろうじてがんばってきた中間層を
さらに下層に引きずり込むだけです。
みんなが老後に不安を抱かず、子育てに不安を抱かず、
安心して消費ができる気分にならないと、
デフレからも脱却できないのではないのでしょうか。
 
 おかしいのは、それだけではありません。
消費税の特徴は、広く国民全体から税を徴収することにあります。
つまり、低所得者層であっても、食品を買えば税金を払わなくてはいけない。
また子育て世代は、消費に回すお金が多いわけですから、
多くの税金を負担することになるのです。

 そこで福田議員の「社会保障を充実させたい」という言葉がでてくるのです。
消費税増税は、社会保障を充実させて、
国民が安心して暮らせるようにするためではなかったのか。
いつのまにか、中身が変わっているのに、賛成なんてできませんよ、
というのが、小沢派の主張です(と信じたいです。本当に、みなさんが政争の具と考えていないことを願っています…)。 

 断っておきますが、私は小沢派ではなく(笑)、
むしろ、今、このタイミングで消費税を上げるべきだと考えています。
待ったなしです。財政赤字の放置は、内外に悪影響を及ぼすからです。
もちろん無駄を省くことも大切です。
しかし無駄を省いただけでは、
これからさらに膨大になることが予想される出費をまかなうことなど到底できない。
これから無駄を省く作業を進めつつも、増税もやむなし…。
家庭や地域、そして企業の支えが期待できない今、
もう所得の再分配の機能は政府が担うしかないのです。

 では、どうして三党合意した消費税増税法案は、
社会保障の充実に役立てられないのか。
答えは、選挙にお金がいるためです。
だから国会議員はお金のある人に弱くなり、
結果として政策はお金持ち有利のものになるのです。
そこで出てきたのが「成長戦略」。当然といえば、当然です。
社会保障の充実なんてしても、次の選挙の資金増にはつながりませんから。

 この消費税増税法案は、民主党が選挙前に掲げた「国民第一 生活第一」から、
「お金持ち第一 競争第一」という政権奪取前の従来の政権の方針に
すりより、舵を切った、とみるべきでしょう。

 先ほど、国会議員はお金に弱いから、
お金持ち有利の政策になる…といいました。
じゃあ、「国民第一、生活第一」の政策は実現不可能なのでしょうか。
私はそうも思っていません。
国会議員が弱いものが、もう一つあるからです。
それは、「数」つまり票です。
お金をいくらたくさん使って選挙活動をしたって、
「数」が増えるという効果がうまれなければ、落選なのです。
政治生命は、やはり「数」が握っているのです。

ところが、この「数」は、やたらとTVのイメージ戦略に弱くて、
有名人に投票したり、空気で投票したり、
挙げ句の果て頼まれたから投票したりします。
だから政治家になめられるんです。「数」は「金」で買えると…。

 特に日本が高齢者福祉が充実していて、
子供への支援が少ないのも「数」が多いのがお年寄りだからです。
若い世代は人口が少ない上に、投票に行かないから、
ないがしろにしていいと思われるのです。

 小沢票が何票なんて言うニュースをみる前に、
私たちは今審議されている消費税法案が、もともとどのような形で、
それがどのような形で成立しようとしているのか、よくみる必要があります。

「数」はパワーです。いつまでもなめられている訳にはいきません。